執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~


「だって、おふたりは同期じゃないですか。瀧内部長が日本にいた頃は一緒に仕事をしていたし、仲が良かったですよね?」

 あぁ。そういう意味ね。と胸をなでおろした。

「そうそう。広瀬と瀧内は名物同期で、ぐいぐい周りを引っ張る瀧内と、ひとりひとりを見てフォローする広瀬は、本当にいいコンビだったんだぞ」

 上司の懐かしそうな言葉に、私は苦笑いしながらこっそり深呼吸を繰り返した。

 雅文からは、その後も何度か誘いのメッセージが届いていた。
 そのたびに、用事があるから、具合が悪いから、なんて見え透いた口実で断る。
 送信ボタンをタップする瞬間、嘘をついている罪悪感で、胃がちくりと痛んだ。

食事くらい、とも思うけれど、付き合っていた過去を忘れてただの同期のフリをするには雅文は魅力的すぎた。
 職場で彼の噂を聞くだけで、その姿を見かけるだけで、ひどく心を乱されている自分がいる。


 別れたのはもう三年も前のことなのに。もう決してもとには戻らない恋なのに。未だにひきずっている自分がイヤになってため息をついた。


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