執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~
 

 けれど、どこからもれたのか俺が伊野瀬コーポレーションの御曹司だという噂が流れると、周りの態度が一変した。
 特に女子たちの俺を見る目がガラッと変わったのだ。

 遠巻きにこちらを見てひそひそと話す小さなざわめき。
 俺の一挙手一投足にいちいち黄色い歓声が上がる。
 校門には会ったこともない他校の女子生徒が待ち伏せするようになった。

 その全てが、俺が大企業の社長の孫だから近づいているのかと思うと吐き気がするほど不快だった。

 中でも一番ショックだったのは、親友の彼女が俺に色目をつかってきたことだった。
 親友と仲良さげに微笑んでいた彼女が、俺とふたりきりになると耳元に唇をよせ甘い声で囁いた。

『私、瀧内くんのことずっと前からかっこいいなと思ってたんだよね』

 彼氏がいるのに、なにを言っているんだろう。意味がわからず目をまたたかせると、彼女はピンク色のリップが塗られた唇をにこりと引き上げ、細い腕を俺の首にからめた。


 その場面を親友に見られ、友情は簡単に壊れた。
 俺は友人の彼女に手を出したひどい男だと一方的に責められ、彼女の裏切りを説明するのも面倒で反論せずにあきらめた。


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