執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~




「瀧内雅文です。本日付でカフェ部門の事業部長を務めることになりました」

 リラックスした様子で自己紹介をするその姿を、たくさんの背中の後ろに隠れるようにしてこっそりと眺めていた。

「若輩者ですが、これからよろしく」

 謙遜しているのものの、堂々とした佇まいには自信と意欲に満ちているのがわかる。

 そりゃそうだ。
 誰もが無謀だと思っていたアメリカ進出で大成功を収めて本社に帰って来たんだから。彼がまだ若いから、なんて理由でやっかむ社員はだれひとりいない。

 無期限で言い渡されたアメリカ赴任は、社長の孫である彼に課されたテストだったんだと思う。将来この伊野瀬コーポレーションを継ぐ素質があるか否かの。

 その厳しいテストを期待以上の成果を上げて帰って来た彼は、間違いなく将来この会社のトップに立つ人物だ。

 もともと仕事ができる上に穏やかな人柄で仲間から慕われていた雅文だけど、今彼に集まる視線は三年前とは違う。
 尊敬と期待に満ちた同僚たちの表情を横目で眺めながら、こっそりとため息をついた。

< 77 / 283 >

この作品をシェア

pagetop