real feel
……という訳で、ひとり実家へと向かう俺。
話し合うって言ってもな。
佐伯家のことだったら、俺に構わず祥平と母さんの好きなようにしてくれたらいいと思ってる。
俺が今更意見したり手を出したりする必要なんてないはずだ。
佐伯家の長男だからとか、世間体なのかどうなのか知らないが。
俺は"S・Factory"の経営に関わるつもりなんてないんだから。

もう何年も断り続けてきてるんだから、そろそろ納得して欲しいものなんだが、まだ諦めていないらしい。
もうこれ以上この問題を引きずるのもな……。

この問題が片付かない限り、俺とまひろの結婚話も進められないってことだろうし。
俺は少しでも早くまひろと結婚したいんだから、あまり悠長なことはしていられない。
今日は建設的な話し合いにしないとな。
そして、次こそはまひろを母さんに会わせる約束を取り付けなくては…。
密かに意気込んで、実家のある邦都市への道程を急いだ。



「翔真、久し振りね。元気そうでよかったわ」

「お久し振りです。母さんも元気そうで」

実家に帰ると、母さんが出迎えてくれた。
今日はいつも以上に機嫌が良さそうだけど。

「祥平は?どこいったんだ」

「あ、ちょっとね近くまで出てるのよ。もうすぐ戻るはずだから」

なんだ俺が来るって分かってて、何やってるんだ。
普通家で待ち構えてるもんじゃないのか。

「まあいい、祥平が来る前に母さんには言っておきたいんだけど。俺は"S・Factory"の経営に関わろうとは思っていないから。それに俺もうすぐ……」

「あ、帰ってきたみたい。話はみんな揃ってからね」

………みんな?
祥平が帰って来ただけだろ。

「兄さんもう来てたんだ。じゃあ待たせてしまったか、悪いな。じゃあ早速紹介するよ」

祥平の後ろから着いてきた1人の女性。
どういうことだ?誰か来るなんて聞いていないぞ。

「初めまして……。佐伯サチと申します」

……サッチン?

「サチさんはね、あなたの従妹にあたるのよ。会うのは初めてかしら?」

初対面なんだから、自己紹介だな。

「初めまして、佐伯サチさん。私は佐伯翔真と言います」

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