real feel
「迫田くんは異動ではないけれど、4月から主任に昇格になります」

「えっ俺が?主任ですか?」

「そうよ。迫田くんには私の広報での経験とノウハウを全て受け継いでもらうつもりでいるから。これからもっとビシバシいくわよ!というわけで主任兼、課長補佐ってことになるからよろしくね」

主任でありながら、課長補佐!!
迫田さん、上村課長から期待されているんだ。
同期として嬉しくもあるけれど、先を越されてちょっとだけ悔しいかも。

いくら男女平等が浸透してきたとは言っても、まだまだ女性にとって責任のある仕事を任される割合は男性に比べたら少ないのが現状。
私ももっともっと頑張ってこの会社に貢献したいし、上村課長みたいにバリバリ仕事できるように努力していきたい。

「迫田さん、おめでとうございます!」

「まさか蘭さんより先に主任に上がれるとは思っていなかったよ」

「何を言ってるんですか。私なんて広報では経験ないし、まだまだ勉強する事もたくさんありますし。迫田さんのこと頼りにしてるんですから」

ちょっとだけ大袈裟だったかもしれないけど、最近の迫田さんは以前に比べると本当に逞しく自信を持っているように思える。

「あ、ありがとう!!俺、もっと蘭さんに頼ってもらえるように頑張るよ。広報の仕事に関しては一応先輩だし、なんでも俺に聞いてよ!」


「迫田くん、それはちょっと難しいわ。残念だけど……」

私たちの会話を聞いていたらしい課長が、やんわりとだけど異を唱えてきた。

「え、課長?それどういう意味ですか!」

私たちがこっそり話している内に、他の人の異動について大体の説明は終わってしまったらしい。

「それでは最後になったけど……蘭さん」

「はっはい!」

「広報での半年間、お疲れさま。たった1年だけで貴女を手放す事になるなんて思ってもみなかった事だけど……」

え、待って、私……。

「上村課長、私も人事異動の対象になってるってこと、でしょうか?」

「ええ、そうよ。私だって驚いているのよ。まだまだ貴女にはやってもらいたい事もあったし、広報の看板として育てていきたかったのに。でもね、貴女のいるべき場所はどうやら広報ではなかったみたいなの。残りの半年は悔いが残らないようにココで頑張ってもらうけど、4月からはまた、アッチで頑張ってね。部長も課長も待ってるらしいから」

部長も、課長も……?

「あ、それとね。もう1つあるのよ、蘭さんは……」

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