real feel
「……待って、翔。私もう彼とは、拓実さんとは別れると思う。だから私……」

『拓実さん』こと、小久保拓実(こくぼたくみ)とは、高柳の恋人。
営業部・営業1課・課長であり、俺の元上司である。

俺が高柳と付き合ってる時に、小久保課長と浮気されたと思ってたら、実は高柳の本命は小久保で俺の方が浮気だったのだと知った。
因みに小久保には奥さんがいるから、高柳とは不倫の関係にある。

「もう今の俺にはなんの関係もありません。興味もありませんし、今後一切あなたたちに関わりたいとは思いませんので」

掴まれた腕を振りほどき、高柳に一瞥もくれることなく立ち去った。

携帯を確認する。
まひろからの連絡は、なかったようだ。
不在着信の着信履歴も、新しいメールも届いていない。

………どうして?
胸がざわつく。

だけど俺だって昨日はできなかったんだから、まひろを責める事なんてできないだろ?
自業自得ってやつだ。


─17:50

交流会の終了時間を聞いていなかったが、もうそろそろ電話をしてもいい頃だろうと駅に着いた俺は車を駐車場に止めて、まずメールしてみた。

『駅まで迎えに行く。何時ごろ着く?メールか電話して』

しかし10分経っても返事が来ない。
まさか昨日連絡しなかったこと怒ってるんじゃないだろうな。
今度は電話を掛けてみた。

………………ガチャ。

「もしもしまひろ?さっきのメール見たか?」

『……佐伯くん?私、上村だけど』

………は?
なんで上村課長がまひろの電話に出るんだ?

「はい、佐伯です。蘭さんの携帯ですよねこれ。どうして課長が」

『あのね蘭さんちょっと体調崩しちゃって、熱があるのよ。佐伯くんいま何処?』

「あ、俺なら今駅に来てて。っていうか熱って!大丈夫なんですか?」

『疲れが出たみたいね。いまちょっと眠ってるの。勝手に電話出ちゃってごめんなさいね。佐伯くん、迎えに来たんでしょ?よかったら蘭さんを夜間診療に連れて行ってもらえないかしら。あと30分くらいで着くから』

「はい、分かりました。駅で待ってます」

まひろ、大丈夫なのか……?

< 32 / 221 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop