real feel
「じゃあ携帯は一体どこにあったんですか?見つかったんですよね」

そりゃそうよ、出張から帰ってくる途中でかかってきたんだから。

「高柳が持ってた。俺が急いで帰った時、まだあいつは会社にいたから。俺の携帯に気付いて、保護するために持ち帰ったなんて。翌日会社で返してもらった」

じゃあ高柳さんが持っている時に私が電話をかけたっていうことなんだ。
宣戦布告のつもりで電話にでたのかしら。
あたかもその時、主任と一緒にいるように装って。

「ビックリしましたよ。高柳さんだとまでは分からなかったですけど、女の人が電話に出たりするから……」

「ま、まさか。出張先から電話したのか?その電話にあいつが出たって……」

これまたレアな驚愕と困惑が混じり合ったような表情を浮かべる主任。

「なんでそんな大事なことを俺に黙ってたんだ!そんなこと……クソッ」

「すみません。私も動転しちゃって何て言ったらいいのか分からなくて。それにあの時は私にもいろいろあったんです。そのことも主任とちゃんと話したいのに、熱まで出しちゃうし……。だけど主任が携帯を忘れて帰るなんてよっぽど慌てていたんですか?」

「あの時は約束の時間に遅れそうでちょっとイラついてた。あいつ余計な事をしようとしたりして邪魔するから」

「……約束?その日は予定がなくて暇だから出勤したんじゃなかったですか」

しまった!とでも言いたげな顔をしたけど、フーッと息を吐いて目を伏せたあと、開き直ったように私に言った。

「まひろには内緒にしてたけど、あの日は前から予定が入ってた」

私が出張でいない時を狙って……?

「近いうちに言わないといけない大事な話がある。2人だけでちゃんと話がしたい。俺たちの将来に関わる大事な話だ。今日は無理だろうから、明日にでも。だけど変だな、携帯は確認したけど着信履歴は残ってなかったし。まひろが電話かけてきてたなんて今まで知らなかった」

やっぱり、そうだよね。
知ってたら主任が黙っているはずないもんね。

「もしかして、携帯のパスワードを元カノの誕生日にしたままだったりしませんか?」

「それはない。別れてからは自分の誕生日の番号に設定しなおしたし」

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