real feel
……久し振りに聞いた名前。

高柳夕梨。

もう金輪際、関わることはないと思っていたのに。

「なるべく関わりたくない人ですけど。私情を挟みたくないし仕事は仕事、割り切りますよ。まさか、嫌がらせとか」

「さあな。俺は人事に口出しできるほど偉くもないし。……どうする?まひろに言うのか?」

どうする、俺。

「人事が発表されるまであと1ヶ月くらいですか。発表されてから話します。引き継ぎが始まるまでには」

「そうか。お前ならそうするだろうと思ったけど」

話したくはないが、話さない訳にはいかないだろう。
同じ会社に勤めている以上、こういうこともあり得ると覚悟しておくべきだったのか。
彼女はどういう反応するのだろうか?

社内恋愛というものは、本当にやっかいだ。
高柳との関係を断ち切った5年前に、懲りていたはずだったのに。
でも、俺にとっては最後だから。
"蘭まひろ"という名のハニートラップに、自ら望んで堕ちたのは俺なんだからな。


その後、人事異動の辞令が正式に公表され、まひろに高柳と以前に関係を持っていたことを告げた。

異動については、予感があったらしく覚悟は出来ていたようだ。
高柳の件については、俺とまた同じ部署になるという事実に困惑を隠せない様子だったけど。

「でも、ちゃんと主任から話を聞けて良かったです。話してくれなかったり、他の人から聞かされたら嫌だから……。前科もあるし」

「は、何だって?」

前科だと?

「覚えていないんだったら大丈夫です。あ、忘れるの得意でしたよね?主任」

………この野郎。

「え?『この野郎』って、もしかして私のことですか?」

エスパーか!
やばい、かなり俺に不利な状況だ。
ここで拗らせてしまうわけにはいかない。

「高柳とはなるべく関わらないようにする。たとえ部署が離れても、俺のパートナーはお前しかいないと思っているから。過去のことは忘れた。だって俺は……」

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