real feel
良かった……。
主任はきちんと否定してくれた。
私が今こうして主任と一緒にいることが、私の存在意義。
主任が私を必要としてくれる、そのことに私が存在する意味があるのだ。

「私、生まれてきて良かったんですよね?」

私の手を更にギュッと握りしめて、私を真っ直ぐに見つめながら主任が言った。

「当たり前だろ!お前が無事に生まれて、ご両親はどんなに喜んだ事か。お前はみんなに祝福されて生まれて来たんだよ」

何を私は1人で悩んで落ち込んでいたのだろう。
主任はいつでも私の話を聞いてくれるし、いつだってありのままの私を受け入れてくれるのに。
あの邦都への出張以来、いろいろと立て続けに考えることが多すぎた。
主任にもう少し上手に甘えられたらいいのに。

「俺の口から全て話してしまうより、ご両親からも話を聞いた方がいいだろうな」

「え、もしかして母だけでなく父からも?」

「そうだ。蘭先生もまひろともう一度話したいと言ってた。もう大丈夫だろ?今後のことも含めて、きちんと話し合おう。俺が一緒にいるから」

今後のことも……。

「分かりました。今夜にでも母に相談してみます」

話が一段落ついたところで、森山さんがコーヒーを持ってきてくれた。

「お、2人ともスッキリした顔してるね!蘭さん、コレ試作品なんだけど」

「わあ!プリンですか?美味しそうですね!」

「お客さんにお試しでサービス中なんだ。よかったら食べて感想聞かせてくれるかな?」

「先輩、俺も一応"お客さん"なんだけど」

「悪いな佐伯。可愛い女性限定なんだ」

もう、リップサービスなんだろうけど『可愛い』なんて恥ずかしい。

「蘭さん、今度は佐伯とじゃなく友達とおいで。1人でも大歓迎だけど。コイツの学生時代の話でも」

「先輩、こんなとこで油売ってていいんですか?」

「おっと。じゃあ感想はあとで聞かせて、蘭さん。ごゆっくりどうぞ」

「……まったく。さ、邪魔者も消えたし、一口くれよ」

そう言って悪戯っぽい笑顔を見せた主任が、首を私の方に突き出して口をアーンと開けた。

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