real feel
「朝川さん、メーカーへの発注これだけですか?その他に何かすることは……」

「あ、それじゃ総務へのお使いを頼んでもいいかな。この書類を総務課長に届けて欲しいんだけど」

「はい。発注が終わったら直ぐに行ってきます」

流石、営業は活気に溢れている。無理してこの雰囲気に馴染もうとは思わないけど、頭を柔軟にすることでその場に合った対応をできるように心掛けた。

「今から総務まで行ってきますけど」

「蘭さん、経理にも寄って来てくれるかな。このファイルを有田さんに……っと、もう『宮本さん』なんだっけ。彼女に返さないといけなかったんだけど返しそびれてて」

やった!大義名分付きで菜津美に会える!
なんて本音は仮面の下に隠す。

「はい承知しました。では行ってきます」

先に総務課長に書類を手渡し、経理に顔を出す。

「有田さん改め『宮本さん』にファイルをお返しに参りました」

「あれ、まひろ!あ、そっか今は営業1課だったよね。ビックリしたー」

突然の訪問にも関わらず、笑顔で迎えてくれる菜津美。
ファイルを手渡して、ほんのちょっと息抜きのつもりで言葉を交わす。

「ねえ菜津美、今日一緒にシャ食いかない?いろいろ話したいし」

「あ、ごめん。ちょっと手続きのために昼休み外出するの。平日は仕事だし、名義変更とかいろいろね……」

そっか新婚さんは忙しいんだもん仕方ないか。
それにしても菜津美幸せそうだな、私まで嬉しくなってしまう。

「残念!惚気話とか聞いてあげようかと思ってたのに」

菜津美だって私に聞いて欲しいはず。

「もうやだぁ、まひろったら。私だってまひろのこと聞きたかったのに。また今度ゆっくり話そうね」

名残惜しさに後ろ髪引かれつつ、経理部を後にした。

営業1課に戻ると同時に正午のベルが鳴り、昼休みに突入……。

「蘭さん来た来た!さ、行くわよ」

「え、朝川さん、行くって何処に?」

「シャ食に決まってるでしょ!ほら早く!!」

朝川さんと池田さんに両脇から腕を掴まれて、シャ食に連行された。
なんか、いやな予感がするんだけど……気のせいかな。
今日はみんな同じ"トルコライスセット"を注文。

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