感覚
「こうやって円を書く、でその中心に点を書く。
お前には何に見える?」
「乳首だな。女の。」
「そうか。俺にはこれが目に見えるんだ。
ずっとこっちを見て俺を休ませてくれない。
俺が忌み嫌っているものの一つだ。」
「大変だな。」
「そう。大変だ。
いつまでたっても慣れやしないし、
いつまでたっても俺から目をそらしてくれない。」
「そりゃ、困ったもんだ。」
「よし、じゃあこれは何に見える?」
「生殖器だ。女の。」
「ほう。だが、俺にはやはり目に見える。
今度はもっと禍々しい目だ。
俺の生気を吸い取って俺を俺で無くするものだ。」
「それはまた大変だな。
女とセックスも出来ないのか。」
「それとこれとは別だ。
ずっと気持ちは悪いがセックスは出来るぞ。」
「それになんの意味がある?」
「なんの意味もないさ、なんの意味も。」
「お前は変だから息をするのも一苦労だな。」
「そう思うか?俺はお前のほうが変に見えるぞ。」
「どこがだ?」
「全部だ。」
「ほう。全部ときたか。何も言い返せないな。」
「だろう?」
「だが、俺は変ではないぞ。
お前が変だから俺が変に見えるだけだ。」
「そういうものなのか?」
「ああ、そういうものだ。そういうものでしかない。」
「そういうものなのか。」
「ああ。意味なんか考える必要も無いし、
考えたって意味なんか出てこない。
なぜ?と思っても理由なんかない。
ただただそういうものだ。」
「そういうものかぁ。」
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

蛾

総文字数/272

詩・短歌・俳句・川柳1ページ

寝首

総文字数/495

詩・短歌・俳句・川柳1ページ

無鉄砲な夜に撃たれて

総文字数/253

詩・短歌・俳句・川柳1ページ

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop