【完】俺様彼氏は、甘く噛みつく。

「台車はっけーん。んじゃ行こうか。台車2台ずつ使えるって」と倉本さんが台車を押し始めると、木島さんがショートカットの黒髪をかきあげて「だるー、めんどー」とぼやいた。


「さっさと終わらせよ。てか昨日先輩があげてた動画みた?」


「見た見た! めっちゃ笑った!」


いつの間にか、ふたりから完全に外れてしまった。


あたしはただ、ふたりの後ろで台車を押しながらついていく。


居心地が悪い……。


ガラゴロと道を鳴らす台車の音に集中して気を紛らわしていたとき。


「ってか手分けした方が早いよね? 衣川さん!」


突然名前を呼ばれて顔を上げた。


「二手に分かれようよ。こっちからこっちの地域はうちらやるから、衣川さんはこのへんやって」


「え……待って」


言われた場所を急いであたしの地図に書き込んだ。

……こんなに、ひとりでまわるの?



「んじゃ、学校集合ってことで」


楽しそうな二人の背中が離れていく。

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