【完】俺様彼氏は、甘く噛みつく。
「俺一回、駆に聞いたことあって……。それがあって俺は“駆は衣川さんのこと本気で好きなのかな”って疑問に思ってたんだよね」
その先を言いづらそうに顔をゆがめる彼の言葉をあたしは、いい言葉なんかこないことを覚悟して待っている。
「駆に俺、『どんな子でも付き合わないのか?』って聞いたことがあるんだ。
そしたら駆『付き合うとすれば“一番”可愛い女子だな』って笑ってて……」
見るのが苦しくなるほど申し訳なさそうな表情だ。
「で、その……衣川さんって、少なくとも学年で一番かわいいと思うんだよね。駆もそう言ってたし……。つーか、学年一の美女って何回も言われたことあるよね?」
心臓が、バクバクと、音を立てる。
「一番可愛い女子と付き合ったら二条先輩悔しがるかな、って……そう言ってた」
「じゃ……あ、駆くんがあたしに“付き合わない?”って言ったのは」
涙が浮かび始めて、声が震える。
「……二条先輩への当てつけ」
金髪の彼がそう言ったすぐあと、チャイムが鳴った。