極道の娘の恋物語
「「お嬢、ご決断を!」」

東条組、跡取り娘の東条楓はある決断をしなければなかった。

「…。よし覚悟は出来た。」

そう聞いた舎弟達は静かに頷いた。



「とりあえず原田組とは関わりたくない。ほうちしておこう。」

「「わかりました、お嬢!!!」」



原田組とはライバルの組である。東条組の方が弱いのでライバルと呼ぶべきではないが。

原田組は薬や銃に手を出しているため関わると色々やっかいなのだ。

それは舎弟も含めて東条組全員が分かっていた。

「とりあえず持ち場に戻れ、何かあったらまた呼ぶ。その時はすぐに集まれ。」

楓が声をかけると舎弟たちは持ち場に戻って行った。

「お前ら、あたしには護衛はいらないと言ったはずだが。」

楓はずっとそばに居る護衛の、千秋と千春に声をかけた。

「…私たちお頭に頼まれたんですよ。」

「お嬢には護衛いた方がいいと思いますよ?」

そう言うのには理由があった。

楓は喧嘩が強い訳では無い。

しかし人をまとめる力はあった。だから跡取り娘として東条組にいる。

もちろん楓にも得意なものはある。射的だ。

しかし東条組は素手で戦うと決めているため銃は使えない。

簡単に言うと楓は弱い。

「…否定はしない。でも四六時中一緒というのは気が引けるな。何かあったら呼ぶ。自分に危険が迫ることくらい分かる。外で待機していてくれ。」

そう言うと渋々千秋と千春は部屋から出ていった。



楓は人を追い出してやりたいことがあった。


可愛いフリフリのスカートを着たかったのだ。


ふだん東条組の仕事をする時には黒い着物でロングの髪をおろしている。

しかしプライベートでは可愛い洋服が大好きなのだ。

1人でスカートを着て、髪型を整え、化粧をしていると


「お嬢っ!後燕(こうえん)が攻めて来まし……失礼しま…した…?」


後燕とは最近調子に乗っている暴走族だ。


「気にしないで。続けて。」


「は…い。今お頭が対応していますが数が多いので避難して欲しいとのこと。」


「わかった。その前にお父様の所へ行くわ。」


「案内します。」



時間がなかったので着替えずにそのまま行くことにした。

千秋と千春が合流すると少しびっくりした顔になっていたが気にしない。


「千春!」


「はい!」


「椿さんに応援を頼んで。」


「わかりました。お嬢気をつけて。」


「千秋がいるから大丈夫よ。」
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