COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
「楓…」
でも。
いざその名前を口にすると、心に沸き上がった違和感に気が付く。
ああ、私は楓を通して”勇太”に会いに来たんだ。
だから目の前にいる“楓”を心が受け入れることを拒否している。
『ん、ありがと』
そう微笑んだ彼はきっと
私のこんなずるい気持ちも全て見透かしている。
そんな気がして心の隅に少しだけ残った良心が痛んだ。
次の言葉が見つけられずにいると、心地いい力で手が引かれた。
視界が揺らぐと、私を受け止める香り。
『特に意味なんてないよ。
…可愛い子に名前呼ばれると、』
彼の声が優しく耳元で囁く。
『興奮するだけ』
そう言うと、まるで堰を切ったように私の首筋に唇を這わせた。