COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

もう、と彼を小突く。

「ちょっと不思議に思っただけ!」

彼はおどけるように笑うと、視線を前に戻した。


『…キスは彼女だけにしかしないかな』

彼の言葉が空間に消えた。


そっか。そうだ。

この奇妙な関係。


それも今だけ。

私に彼の未来を縛る権利なんてあるはずがない。

そんな当たり前のことになんだか少しだけ寂しい気持ちになる、自分勝手な私。

こんな私がいることも、私は知らなかった。


家に帰れば一人、あの日と同じように
きっとまた今日のことを後悔するんだろう。

そしてどんどん自分の事を嫌いになる。
そしてまた…。


天井を見上げると、また小さな暗闇が心に巣食っていく。

ああ、これは麻薬のようなものだ。

その暗闇から目を背けるように、ゆっくり体を起こした。


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*CAFE AU LAIT
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