COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
水族館のチケット、先に買ってる人初めて見たかも。
そんなことを考えていると、有松さんが返事を急かすようにこちらを見た。
『こんなにギリギリに誘って迷惑かもしれないが…
なかなか誘うタイミングが掴めなくて』
怖い人じゃないって、本当はわかってる。
きっと正直でまっすぐな人。
前売り券を買う有松さんの姿が浮かぶ。
これを手に何度も私を誘おうとしてくれたのかな。
「…はい、行きます」
そう答えると差し出されたチケットを受け取った。
家までの道のりを歩きながら、昔の彼とした水族館デートを思い出した。
私が魚を見て「おいしそう!」と言うと、
当時の彼はとてつもなく引いた顔をしていた。
今思い出すとちょっと笑える。
そんな苦い思い出を思い出しながらも、チケットを眺めると心が弾んだ。