COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
ボールペンを手に取りデスクの下へ隠す。
思いきりクマの頭をひっぱるが、取れない仕組みのものらしく、びくともしない。
『やばい、クマの首もいでる!』
『こわいってば!』
クスクスと笑う声がまた聞こえる。
大丈夫、こんなのには慣れている。
今だけ我慢すればいい。
そう言い聞かせると、ぐっと奥歯に力を入れた。
ガチャッ。
ドアが開く音と共に一人の女性が入ってくる。
どうやら次のオリエンテーションが始まるようだ。
視線はその女性に集まり、部屋が静まり返った。
華奢な身体から伸びた細くて長い脚。
歩くたび艶々と光る長い髪の毛は綺麗にカールされている。
大きな目にスッと鼻筋の通った美しい顔立ち。
その人は芸能人ではないかと思うほど洗練された、とても綺麗な人だった。
まるで映画のスクリーンから飛び出したきたヒロインのようで、とてもじゃないけれど自分と同じ人間だとは思えない。
『え、めちゃくちゃキレイ!』
『やばい!』
ヒソヒソと話す声がまた湧き上がると、
羨望と憧れに満ちたその声が、まるで水面にできた波紋のように広がっていく。