COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
本当は、今すぐに彼の胸に手放しで飛び込んでしまいたい。
そう思う気持ちは本物だった。
でもこんな中途半端な状態のままでは、彼に迷惑がかかるかもしれない。
傷つけてしまうかもしれない。
彼の優しい笑顔を奪ってしまうなんてことは、絶対にしたくないことだった。
「だから…」
ごめんなさい。
そう続けようとした時、彼の声がそれを遮った。
『それでもいいって言ったら…
どうしますか?』
重苦しい沈黙の間に、様々な想いが絡み合うように頭の中を賭け巡る。
彼はまっすぐ私を見つめて、その返事を待っているようだった。
静まり返った店内。
二人の間に流れる空気を感じ取ったのだろう、彼がぽつりと呟いた。
『…また今度、返事聞かせてください』
彼はそう言うと、今度こそ私の身体を解放した。
「…ごめんね」
確かに発したはずの言葉は、まるで彼に聞かせたくないように小さな小さな声だった。
目の前にいる彼を見上げる。
『続き…やりましょう!
今日で完成ですよ』
そう言って、彼は優しく微笑んだ。
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He can't help falling in love with her.