COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
その小さな部屋は窓がない代わりに、ランタンのオレンジ色の光に満たされていて、
時間という概念がなくなったような不思議な空間だった。
部屋の中には二、三人ほど並んで座れるくらいの小さなカウンターテーブルがあって、
そこに彼女は座っていた。
『あ、昭香先輩!』
「理央、おはよっ!」
挨拶をしながら彼女の隣に腰かけ、テーブルを見渡していると
彼女が黒色の革のカバーつけられた本を差し出した。
『あ、メニュー表どうぞ』
「じゃあー、私ブラックにしようかな。っていうかもしかして待っててくれた?」
『あ、いえ、私もさっき来たばっかです』
そう言って微笑んだ彼女はやはり元気がない。
夜もあまり眠れていないのだろうか、彼女には珍しく目の下にクマができていた。
それに付け加え、どことなくその動きのひとつひとつに緊張が見て取れた。