COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

気付けば後ろから抱き締められるような格好で、彼の腕の中にいた。

「春田くん…?」

『少しだけ…

こうしててもいいですか』

彼の(かす)れた声が身体中に響く。
けれどいつもの彼とは違う、どこかせつなげな声。

彼の温度を直に感じながらも、声色からはその表情は全く読めない。

こんなにも近くにいるのに。
誰よりも大切にしたいのに。

彼が今何を考えて、何を思っているのか私にはわからない。

目の前にまわされた彼の腕にそっと触れると、その腕は静かに私を抱き締めなおした。

こうしていつも自分の無力さに自己嫌悪を繰り返すばかりで、私はいつまで経っても成長しないままだ。

私は、本当に彼の隣にいてもいいのだろうか。

更に近くなった彼の香りに包まれながら
昼間の昭香先輩の笑顔が頭に浮かんで静かに消えた。

NEXT

*SHOGO side
< 422 / 449 >

この作品をシェア

pagetop