COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
いや、気付いて欲しくなかったと言えば嘘になる。
彼女の傍にいると決めたあの日の自分自身の行動を後悔した事は一度もない。
それでもいい、そう思った気持ちは本物だ。
でも。
『あの、春田く』
彼女がこちらを振り返る直前、その背中を強引に引き寄せた。
すっぽりと腕の中に納まった華奢な身体と、バニラのような甘い香り。
『…春田くん』
俺の名前を呼ぶその声も。
全て俺だけで埋め尽くしたくなるこの衝動だって、本物だ。
「少しだけ…
こうしててもいいですか」
それに応えるように俺の腕に触る手の感触を感じると、更に強く彼女を抱き締めた。
身体から身体へ伝ってくるように感じる彼女の戸惑いは、きっと気のせいではないのだろう。
彼女を困らせたいわけではない。
でも、今だけは俺の事だけを考えて、戸惑って欲しい。
そんな最低な事を、俺は考えていた。
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*CAFE LATTE