COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
何が彼女をそうさせるのか。
今彼女が誰の事を考えているのか、それくらい言わずともわかる。
今にもぐにゃりと拉げてしまいそうな程の胸の痛みに、思わずガラスケースに彼女の身体を向けるように繋いだ手を引いた。
「お腹空きましたね!今日は、何食べたいですか?」
わざとらしい程明るい声色で彼女に問いかけると、彼女は戸惑いを隠しきれない様子で目の前のガラスケースに視線を落とす。
“「今、誰の事を考えているの?」”
気を抜けば口をついてしまいそうな言葉を生き埋めにするように、ガラスケースの中に並べられた料理の説明を息継ぐ間もなく続けた。
いよいよ説明が終わる頃、
視界の端にこちら見つめながら料理の説明を黙々と聞いている彼女が映る。
「えっと…、どれにします?」
『そうだね…どれにしようかな』
そう言って、彼女は視線を外すと再びガラスケース覗き込んだ。
どうやらその様子から、俺のあからさまに不自然な様子にも気付いているようだ。