COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

『…もちろん』

そう言って私の顔を覗き込んでくるいつもの優しい笑顔。

『引っ越しする前に、花緒のご両親にも挨拶に行かなきゃいけないね』

「え?」

『一緒に住むんだから』


“両親への挨拶”

明確な言葉を彼の口から聞いたわけでもないけれど、その言葉の後に続いて誰もが連想するであろう言葉が頭に浮かんだ。

もちろん考えていなかった訳ではないけれど。

頭の中でぐるぐると思考が絡まっていく中、彼の声が再び降ってくる。

『…花緒?』

「それは…、

その、急ぐ事でもないし、ちゃんと私からも話しておくから」

必死で言葉を絞り出すと、彼を見上げる。
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