彼はネガティブ妄想チェリーボーイ
逃げるようにグランドに駆け込む。
後藤と荒木の顔を見つけた途端に、飛び込んだ。

「助けて助けて助けて助けて。」
「どうした、どうした。」
「矢野美織に告白された・・・」

俺の告白に2人は顔を見合わせる。

「うぇーい。」

そしてなぜか俺とハイタッチ。

「どうしよう。」
「どうしようって何が。」
「彼女いないなら友達からって言われた。」

荒木が「自慢かよ。」と軽く肩を殴ってきた。

「ええー」

俺が渋る。

「何が問題なのかさっぱりわからない。」

後藤が言う。

「あの女、面倒臭そう。」

俺が言うと、やっと2人が納得の表情をした。

「乳臭いよな。」

荒木が言う。

「そう、乳臭い。」
「お前、付き合ったら童貞捨てられるぞ。」
「ああ、3日くらいで捨てられるとは思う。」
「付き合えばいいじゃん。」

2人は冷たい。

「嫌なんだよ、嫌なんだよ、俺は。」
「なんだよ、面倒くせえな。」

俺を置いて2人は進んでいく。

「ねーえー」

後ろから2人の肩に腕を回して間に割り込む。

「重てえよ。」
「前山さんと付き合えばいいじゃん。」

後藤が面倒臭そうに俺の腕を振り払って言った。

「はあ?」
「そんなに矢野美織が苦手だったら、明日『前山さんと付き合ってます』って言っちゃえばいいじゃん、嘘でも。」

嘘でもって・・・

荒木も俺の肩に腕を回す。

「今度はお前が前山さんに告白する番じゃね?」

・・・

荒木が俺の目をじっくりと見つめてくる。

「はあ?できると思うか?俺が?沙和に?むりむりむりむり。」

俺が全力で首を横に振るのを見ると、2人は冷ややかな顔をしてため息を吐いた。

「だってさ、だってさ、振られたらどうすんの?俺、ご飯食いに行けないじゃん。あんなに定食好きアピールして毎晩食いに行ってるのに、一発で食いに行けなくなるし、会ったら気まずい。今までの関係が終わる。むりむりむりむり・・・。」

荒木が俺を振り返る。

「おーい、3年もう集まってるぞ。」

県予選前の先輩たちのピリピリした空気感。
分かってるけど、ちょっと今、気持ちの整理がつきません。
ごめんなさい、先輩。

俺は仕方なく頭を切り替えて走り出した。
< 2 / 96 >

この作品をシェア

pagetop