彼はネガティブ妄想チェリーボーイ
帰りのバスの中。
みんな寝たり、ジュース飲んだり、好きに過ごす。

隣の松崎が小声で話し掛けてきた。

「どこまでいった?」
「え?」

質問の意味が分からなくて聞き返す。

「前山さんと、どこまでいった?」

こいつも彼女いないからって俺に焦ってるようだ。

「何もしてねえよ。」

嘘つきたい気持ちもあったけど、素直に白状する。

「嘘だろ、何かしただろ。」
「してねえよ。」
「じゃあデートは何してんだよ。」

松崎の言葉にハッとする。

デート・・・?
って俺ら、してなくね?

あれ?
俺と沙和って本当に付き合ってんのか?

前の座席に座ってる後藤が上から覗いてきた。

「家隣同士だったら、簡単に部屋呼べるじゃん。」
「えっ!」

部屋に呼ぶなんて、中1以来だ。
あの頃は、お互いの友達を呼んだり、うちで漫画読んでいったりしてた。
だけどもう、やましくてそんなことできない。

そもそも俺の部屋に沙和が気軽に来るとは思えない。

松崎が「そうだよ。」と乗っかってくる。

俺はブンブン首を横に振った。

「むり!来るわけないじゃん。」
「なんで?付き合ってるんでしょ?彼女なら部屋に呼べば来るだろ。」

ええ〜〜〜

後藤の隣の荒木が上からニョキッと顔を出した。
そして寂しげな声で言う。

「でも、なんかお前、都合よく利用されてるだけにも思えるんだよな。」
「そうそれ!それなの!そう思うんだよね、俺も!」

俺はずっと心に引っかかっていた思いをぶちまけた。

松崎と後藤が「えっ・・・」と黙り込む。

「なんか、付き合ってる実感がないっていうか、沙和に好かれてる自信が微塵もないっていうか・・・」

俺の吐露に、場が固まってしまった。

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