彼はネガティブ妄想チェリーボーイ
店のドアを開けると、おばさんの顔がパァッと笑顔になった。

「平良くん!やったね、西高に勝ったんだって?」
「ああ、はい、おかげさまで。」

店内で拍手が起こる。

ああ、恥ずかしい。

ここの常連客で、高校野球部の先輩だというおじさんもいる。
つかまると話が長くて面倒くさい。

目を合わせないようにして俺はいつもの席に座る。

沙和はまだいない。

ちゃんと言えるかな、俺。
頑張って言うんだ、俺。

定食が運ばれてきた。

ずっとスタミナ炒めだったのに、今晩は俺の大好きなササミと鶏皮ポン酢、その他焼き鳥の盛り合わせだ。

すげえ。

「おつかれさま定食。9回投げ切ったんだってね!」

おばさんの笑顔が眩しい。
ああ、頑張って良かった。

「好きなものばっかりで、すげえ嬉しいっす。いただきます!」

俺は手を合わせて食べ始めた。

その時、奥の階段を降りてくる音がした。
沙和だ。

ドキドキ・・・

いつも通りのTシャツ姿。
飾らない感じ、俺は好きだ。

まっすぐに俺の斜め向かいの席に座る。
バチッと目が合った。
ああっ・・・(胸キュン)

「おめでとう。」

そういう顔も、やっぱりポーカーフェイス。

「おお、ありがと。」
「次の試合いつなの。」
「あさって。」

俺が答えると興味なさそうに「えー、見れないじゃん。」と言う。

感情がこもってねえよ、感情が。

「べつに来なくていいよ。」

つい言ってしまう。
来られたら来られたで緊張するし。

「あっそう。」
「野球の試合とか興味ないだろ。」

そう言ったものの、少し反応が気になる俺。

「まあね。」

沙和のドライな口調で返ってきた。

うおおおおお・・・
予想はしてたが、少しへこむ。

やっぱり興味ないんかい。

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