彼はネガティブ妄想チェリーボーイ
「おじゃましまーす。」

声を張ってドアを開ける。
沙和ん家のおばさんが厨房からひょこっと顔を出す。
いつも。

「平良くん、今日遅かったじゃないの。
「部活でこれからの部長とか決めてて。」
「ああ、そうか、そういう時期なのね〜。」

俺はおばさんと会話をしながら沙和の斜め向かいに座る。

沙和はご飯を食べ終えたようで、宿題をしていた。
軽く覗くと、うちのクラスの前の章をしている。

「沙和のクラス、まだそこまでしか行ってないんだ?」

俺が言うと、沙和が軽く驚いて顔を上げた。

「え?違うの?」
「もう次のとこやってるよ。」
「早。」

俺はノートを取り出して見せた。
自分でも悲しくなるほど、すげー汚ねえ字。
やっば。
見せるんじゃなかった。

「じゃあ平良が私の宿題やってよ。」

沙和が気だるそうに言う。
数学やってる時の沙和はいつもこうだ。

数学に拒否反応を起こしてるように見える。

振り返ると小学校低学年の割り算あたりから徐々にこういう顔を見せるようになった。

俺はいつもかっこいいとこを見せようといつも沙和の宿題を手伝ってきてた。
けど、実際は使われてるんだろうなー。

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