彼はネガティブ妄想チェリーボーイ
部活の間も、明日の試合より沙和のことがグルグルしていた。

昨日の試合のこともあって、いつもより練習量が少ないせいもある。
みんながいつも通りの練習量をこなす中、一人だけ軽くピッチングの練習。

明日の朝までに、試合に集中するところまでメンタルを持っていかないといけないのに、こんなんで俺はどうするんだ。

休憩中水を飲んでいたら、後藤と荒木が近寄ってきた。

「平良、大丈夫か。」

荒木が言う。

「顔死んでるぞ。」

後藤。

俺は「うん。」とどっちつかずの返事しかできない。
荒木が口を開く。

「お前はもうとっくに明日の試合諦めてるかもしれないけど、俺は勝つ可能性がゼロではないと思ってる。明日、もしかしたらもしかするかもしれない。」

合わせる顔がない。
後藤が続ける。

「商業が明日控えのメガネピッチャーを出してきたら、一気に可能性上がるぞ。」

俺を鼓舞するような口調だ。

ああ、なんでこんなに2人はまっすぐなんだ。
俺も野球バカなはずなのに、なんなんだ、この差は。

「うん、ごめん。」

回らない頭でやっと返したのは、それだけだった。
俺の表情を2人がジッと見てくる。

「今日、前山さんとちゃんと話し合ってみた方がいいんじゃない?スッキリするかも。」

荒木が言う。
俺は視線を荒木に向ける。

話し合う?

「前山さんの気持ちが分からなくてグダグダしてるなら、ちゃんと気持ちを聞いた方がどっちに転んでもスッキリするだろ。」

荒木の言葉に後藤が頷く。

情けない。

恋愛のことしか考えてない自分に改めて気付く。

「うん、そうだね。そうなんだよね。」

自分に言い聞かせるように言った。

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