彼はネガティブ妄想チェリーボーイ
登校デート
6時半の目覚ましの音が鳴る15分前に起きた。
というより、いつも6時には起きていたから、そんなに寝続けられなかった。

今日は珍しく朝練がない。
そして終業式。

ずっと、沙和と一緒に行こうか、一人で行こうか悩んでいた。

どっちにしろ、夜はいつも通り沙和ん家に行くんだ。
朝練がないのに、別々に行くのって逆に不自然じゃないか?

だって付き合うことが決まった時に、沙和の方から「一緒に行く」ようなことを言ってきたことがあったし。
朝練の時間に付き合わせるのはバタバタするから断ったけど、べつに俺と一緒に行くのは構わないはずだ。

そして昨日はキスしても嫌がられなかった。
(嫌だったら全力で避けられたはずだし、あれは受け入れてたはず。)

そもそも向こうから抱きしめようとしてくれた。
俺を。

この恋、もしかして脈ありなのでは。

沙和は、もしかして、俺のことを嫌いではない・・・?

昨日の夜のことを考えながら、バーッとご飯を食べて着替えてると7時になっていた。

そして家を出た今もまだ悩んでいた。

沙和ん家の店の脇に置かれた自転車が目に入る。

あ、まだ家にいるんだ。

これは誘う方がいいんじゃないか。
ごく自然体を装えば、断りもしないだろう。
さも当然かのごとく・・・

俺は店に近づくと、一度深呼吸をした。

きっと大丈夫だ。

勢いでドアを開ける。
と、そこには今家を出ようとしていた沙和がすごく驚いた顔をして突っ立っていた。

「おはよ。」

目を見開いて固まっている。

「よかった、一緒に行こうかと思って。」

俺の口からとても自然な誘い文句が出てきた。
グッジョブ。

「あれ?朝練は?」
「今日はさすがにないから。」
「そっか。」

沙和は少しうつむきながら、外に出た。

初だ。
初デート。

朝こんなことして一緒に行くなんて今までなかったもんなー。

「付き合ってる」って感じ。

俺は内心ニヤニヤが止まらない。

みんな俺らを見たらどう思うかなー。
沙和のこと狙ってた奴らに見せつけてー。

THE 俺の女、って感じ。

昨日キスもしたし、完全にこれは恋人と言っていいんじゃないか。

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