彼はネガティブ妄想チェリーボーイ
終業式の夜
家に帰ってきて、とりあえずシャワーを浴びる。

タッチを貸すとは言ったけど、俺はもう中2の頃の俺じゃない。
タッチを読ませて「俺たちこうなるといいな」と遠回しなアプローチなんてしない。

だいたい浅倉南と沙和は性格がまるで違う。
「浅倉南みたいな女が好きなの?」と思われかねない。
それは危険だ。
俺は別に浅倉南のような女性になってほしいとは思ってない。

そして、もうあの2人のような関係になりたいと思うことはなくなった。
沙和が読みたいというなら大喜びで貸すけど。

本棚の前で散々迷った挙句、俺はタッチを一冊も持たずに家を出た。

「あれ?タッチは?」

案の定、手ぶらな俺を見て沙和が開口一番に言ってきた。

「ああ、持ってこなかった。」
「あんなに読めって言ったのに。」

納得できないような顔。

「まあ、あれだ。俺、浅倉南じゃないし。」
「分かってるけど・・・」

沙和が呆れたように返す。

「いや、そうじゃなくて。あんな人間じゃないから。保健室のは嘘。」
「はあ?」

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