素直になれない夏の終わり

「あそこなら、倒れて中身が飛び出ることはないからね。他の物も片付けておいたけど、あれだね、なっちゃんの部屋は圧倒的に収納が少ないね」

「……しょうがないでしょ。部屋が狭いんだから、物が増えるともっと狭くなる」


ワンルームの二階建てアパート、それが現在の夏歩の住居で、大学入学と共に借りた部屋だが、内定を貰った会社がそれほど遠くない距離にあることと、引っ越しが面倒だったこともあって、今もなお住み続けている。

少し手狭だが、風呂とトイレは別だし、大家は気立てのいい人だし、隣近所とのトラブルなんかもないので、夏歩は割とこのアパートを気に入っていた。


「それにしたって、テレビもないんじゃあ、寂しくない?」

「慣れればそんなに気にならない。元々、そんなにテレビっ子でもないし」


そんなもんかな……と呟いた津田は、持っていたペットボトルを、わざわざキャップを緩めてから夏歩に渡す。

起きてからずっと、頭だけでなく喉も少し痛くて声が出しづらいこともあって、夏歩は渡されたペットボトルを素直に受け取った。

緩めてあったキャップを開けて口をつけると、冷たい水が喉を通って体の中に流れていく。

その感覚が気持ちよくてつい飲みすぎて、ペットボトルから口を離した時には、胃の辺りに何とも言えないモヤモヤとした気持ち悪さが漂い始めた。
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