素直になれない夏の終わり
全く記憶にないのだが、振り返った津田は疑わしげに自分を見る夏歩に向かって、「これは誓ってほんとのことだよ」と言いながら近づいてくる。
その手には、ペットボトルが握られていた。
「Tシャツって案外滑るから、床に置いておくのはやめた方がいいと思うよ。そもそも、洗濯が済んだものを床に置いておくのもどうかと思うけど。全部たたんで、しまっておいたから」
津田は、クローゼットの方を指差して言う。
「……全部!?全部って……し、下着も、あったのに……」
「なっちゃんの下着は色気がなさ過ぎて全然興奮しなかったから安心して。そもそも俺、下着に興奮する性癖も持ち合わせてないし」
そういう問題ではない。
「あと鞄。一体どんな置き方したらあんなに中身が飛び出るのか知らないけど、足引っ掛けたり踏んだりしたら危ないから、今度からそこに置いて」
“そこ”と津田が指差したのは、ハンガーラック。
洗濯物を干す為に窓の前に置かれた、今はハンガーしか掛かっていないその端、少し出っ張ったところに、鞄の持ち手が引っ掛けてあった。