その少女は夢を見る


『…桜、』



黒瀬桜(くろせさくら)。



僕の大切な、唯一の友人。



同い年だけど、妹のようで…可愛くて、優しくて…誰とでも仲良く出来る子だった。



…そして、誰より友達思いで…友達が傷付けられれば、それを許さず傷付けた相手をとことん追い詰める。



そんな、僕の自慢の…親友だった。



…そんな彼女は…つい先日、ここから飛び降りてその命を落としたのだ。



彼女には、とても慕っている兄が居た。



僕もその人とは仲が良くて…本当の妹のように大事にしてくれたことを、ぼくはよく覚えている。



…けれどその人も、二週間ほど前に病によって命を落とした。



桜はその兄が大好きで…血の繋がりは無かったけれど、それよりも深い絆を持っていた。



『…ねぇ、桜、葉兄、二人は今、何処に居ますか?』



そんな、届くことのない言葉は静かにその場に溶けて行く。



『…桜…桜はあの時、何を思っていたの?』



あなたが落ちて行く時…僕はこの場にいた。



なのに僕はあなたを救うことが出来なかった…



『不甲斐ない、なぁ…』



そう言いながら、彼女が落ちて行った地面を見つめる。



『…待っててね、桜。』









今、いくよ。









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