気づけばいつも探してた
軽くリップを塗りなおし、ジーンズにオフホワイトのざっくりセーターの上から黒のダウンコートを羽織った私も更衣室を出る。

ビルの外は予想以上に寒くて、慌てて肩に下げたバッグから手袋を取り出した。

それぞれのクリスマス。

美由紀と竹部さんはアメリカで、そして私と翔は松山城。

なんだかそれぞれにその場所がしっくりくるような気がした。

美由紀には結局竹部さんとあまりうまくいっていないことも、翔とのことも話せていない。

一押しの竹部さんを私に引き合わせてくれたのは美由紀だったもんね。

ちゃんと振られたらまず彼女に報告しなくちゃ。

駅にまっすぐ向かっていたけれど、明後日から松山だしちょっとは新しい服でも新調しようかと思いなおし、会社近くに最近できたショッピングビルに足を向ける。

結局服を見にいったはずが、新しい口紅となぜだか下着を買っていた。

確かに、口紅も下着ももう随分使っていて買ってもおかしくはない。

だけど、よりによって松山行く前じゃなくたって、ねぇ。

何色気づいてんのかしら。

そんな買い物をしてる自分に恥ずかしくなり、買った袋をバッグの奥にぎゅっと押しこんだ。

電車の窓から見える月は、やけに明るく光りながら追いかけてくる。

松山城、楽しいといいな。

そんな明るい月にアーモンド型の翔の瞳を重ねていた。
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