イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。
「悪ふざけが過ぎた。怖がらせたな」


その優しい声音に促されるように顔から手を外すと、剣ちゃんの手が頭に乗る。

視線をそらしたままの剣ちゃんは、うっすらと頬が赤い。


「ほら、練習すんだろ」

「う、うん……」


剣ちゃんから離れると、私は改めて謝る。


「あの……剣ちゃん。私のせいで、学校転校させられたり、ダンスとか慣れないことばっかりさせちゃってごめんね」


私は剣ちゃんにもう一度会えてうれしかったけど、よくよく考えてみるとひどい話だよね。

私のボディーガードになったのも、剣ちゃんにとっては不本意だったわけだし……。


「その代わりと言ったらなんだけど、私が力になれることなら、なんでもするから!」

「別に、お前のせいじゃねぇ。親父はもともと、俺を黎明学園に入れたがってた。お前のことは、ただのきっかけにすぎねぇよ」


本当に、剣ちゃんは優しい。

私が罪悪感を抱かないように、そう言ってくれてる。

だって、お父さんが黎明学園に入れたがってるって知ってて、剣ちゃんは別の高校に行ったんでしょ?

心から行きたい場所、いたい場所があったはず。


「あの……剣ちゃんの通ってた高校って、どんなところだったの?」


私と出会う前の剣ちゃんのこと、知りたい。

剣ちゃんが望んだ場所がどんなところだったのか、教えてほしい。

そんな気持ちで尋ねると、剣ちゃんは懐かしむように宙を見上げる。


「俺みたいのがわんさかいる。不良ばっかだったけど、あいつらには裏表も駆け引きもねぇ。とにかく強ければ認められる、そんなとこだ」

「剣ちゃんにとって、大事な人たちなんだね」

「……変なやつだな、お前。俺の交友関係聞いても、なんとも思わねぇの?」


聞かれている意味がわからなかった私は、一生懸命に思考を働かせていると、剣ちゃんは言葉を重ねる。


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