イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。
「ぜひ今度、愛菜さんにも我が家のホームパーティーに来ていただきたい。お互いのことを知るいい機会に……」

「結構です」


横からご子息の言葉をさえぎった剣ちゃんは、勝手に誘いをはねのけると私を連れてホールの隅まで行く。


「どいつもこいつも……お前のドレス見て、気色わりぃため息つきやがって」


文句をたれつつ、剣ちゃんは近寄ってくる男の人たちを舌打ちで追い払っている。

すごい特技……ちょっと私も身につけたいかも。


「あいつら、ひと回りもふた回りも年上じゃねぇか。鼻の下伸ばしやがって……殴りてぇ」


今にも飛びかかっていきそうな剣ちゃんの腕に、私は慌ててしがみつく。


「それは絶対にダメ!」

「止めんな! っていうか、お前もお前だ!」

剣ちゃんは恨めしそうに私をにらんだ。

「もっと近づくなって威圧しろ。でねぇと、ああいうハイエナどもがわらわら寄ってくんぞ」

「ハイエナ?」

「そうだ。お前ひとりだったら、秒で食われてんぞ」


 そんな、大げさな。

たしかに、いちいち誰かに呼び止められて、その都度相手をしなきゃいけないのは面倒だけど……。

威圧なんて剣ちゃんじゃあるまいし、できないよ!


「お前、こんな媚びへつらって近寄ってくる下心丸出しの人間相手に、よくへらへらしてられんな。参加したくねぇとか思わねぇの?」

「うーん。疲れはするけど、参加したくないとは思わないかな」

「あぁ、お前もできるなら玉の輿にのりたい口か? 女って、そういう生きもんだもんな」


不機嫌そうに悪態をつく剣ちゃんに、私は不思議に思いつつも訂正する。


「玉の輿? あ、結婚相手を探してるとかじゃないよ」

「ならなんで、進んで参加すんだよ?」


不満がありありとわかる声で尋ねてきた剣ちゃんは、腕を組んで壁によりかかると、私を横目に見た。


「私がこうしてお父さんに縁がある人たちと仲良くしてれば、いつかお父さんが窮地に立たされたとき、助けてくれるかもしれないなって」


はたから見れば、ただ笑って媚びへつらってるだけに見えるかもしれない。

だけど、これは私なりの戦いなんだ。

私の言葉を聞いていた剣ちゃんは、じっと見つめてくる。

それから少しして、すっと目をそらした。


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