明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
挙式はしなくてもと言ったのに、『俺が八重の晴れ姿を見たいから』と信吾さんが言うので、真新しい白無垢をあつらえてもらった。
心底愛した彼とは別の人に嫁がなければならないと絶望していたあの頃。
人生をあきらめていたら、こんな幸福はやってこなかった。
「八重……」
挙式を行う黒木家で白無垢を着せてもらったあと、制服姿の信吾さんと対面した。
その制服にはたくさんの勲章がつけられている。
それは彼が努力してきた証だ。
彼は少し離れたところから私の姿をじっと見つめて、それ以降なにも言わなくなってしまった。
なにかおかしなところでもあるのかと心配になった頃、信吾さんは足を進めて私の正面までやってきて口を開く。
「これほど美しい妻を娶れる俺は、幸せ者だな」
「そんな……」
「八重。たくさん苦労をさせた。でも、これからの幸せは保証する」
真摯な視線を私に向ける信吾さんは、きっぱりと言い切る。
「はい。よろしくお願いします」