明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

お母さまも頬を濡らしているのが見えてしまい、信吾さんも感涙をこらえている様子だった。

信吾さんを愛し、ここまでたどり着くのに随分遠回りをしてしまった。
しかし、これからはずっと一緒だ。


「主人は頑固だし世間体もあるから、不貞腐れた振りをしていると思うわ。でも、子の幸せな顔を見たくない親はいないの。だから大丈夫」


お母さまは私を励ます。

こんな言葉をかけてもらえるとは、なんて幸せ者なのだろう。

精いっぱい信吾さんにお仕えして、私たちを迎えてくれた黒木家に恩返しをしよう。

そう心に強く誓った。



やがて遠くの山々が赤や黄色に色づき始める季節となり、私たちは晴れて夫婦となることができた。

結婚が許されあとすぐに入籍しなかったのは、とよさんと章一さんの結婚が先だという意見が信吾さんと一致したからだ。

この日が来るのをもう長く待ったのだから、焦ることもなかった。
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