明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
ひとりが捕まっている間にもうひとりが駆け出したものの、別のふたりの警察官が追いかけていき、数メートル先で地面に押さえつけられてあっけなく捕まった。
警察官といえば、元士族が多く屈強というイメージがあったがその通り。
この程度の男なら片手で十分というような滑らかな動きで、確保してみせた。
「連れていけ」
最初に私を助けてくれた警察官が、他のふたりに指示を出して犯人を引き渡している。
「大丈夫ですか? おけがは?」
男たちが立ち去ったあとも震えが止まらない私の顔を覗き込み、先ほどとは異なる優しい声色で尋ねるその人は、背がすらりと高く、透き通るような大きな瞳を持つ男性だった。
三人の警察官のうち彼だけが制服の袖章の本数が多い。
おそらく階級が高いのだろう。
「だ、いじょうぶ……」
「おっと」
精いっぱいの強がりを吐こうとしたのに腰が抜けそうになり、彼に支えられた。
「申し訳ありません」
「無理もない。怖い思いをされましたね」