My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3

 ツェリの凛とした姿が目に浮かび、唇を噛む。――やはり、どうしようもないのだろうか。

 と、その時背後で扉が開いた。

「今トムが娘に連れられて走っていったが、何があったんだ?」
「入るなって言ってんだろうがー!」

 セリーンだ。その腕の中にはラグがまだ小さいまま収まっている。もし元の姿に戻っていたなら、ドナも気付けたはずだ。

 二人とも私の顔を見て不味い状況だとすぐに察したようだった。
 話したいことはたくさんあるが、男の手前下手に喋れない。

 私が男とセリーン達とを交互に見回していると、アルさんがぽんと手を打った。

「オヤジ、こいつもさっきの姉弟の仲間なんだ」
「は?」

 気の抜けた声を上げたのは指差されたラグだ。
 私も危うく同じような声が出そうになり寸前で抑える。

 男の視線がラグに移り瞬間ヒヤリとするが、男もまさか彼が昼間の青年だとは思わないだろう。
 そうなるとセリーンに羽交い締めにされている今のラグは、捕らえられた子供にしか見えない。

「こいつを彼女とここに置いてくからさ、俺達さっきの二人追っかけてまた連れてくるよ。ついでにモンスターもなんとかしてくっからさ」
「お前何言って――」
「セリーン、こいつ絶対に離すなよ」
「言われなくとも」

 平然と答えるセリーン。

「おい!?」

 ラグの声をアルさんは完全に無視し、戸惑う私の肩に手を置いた。

「よしゃ、カノンちゃん早く追い掛けよう!」
「は、はい!」
「おい!! ちょっと待てこら! くっそ、放しやがれアホーーー!!」

 ラグの怒声を背に、私とアルさんは詰め所を飛び出した。

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