My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3

「アタシはともかく、モリス達をもう恐がらせないでやってくれよ」

 それは哀願に近かった。
 王子はゆっくりと視線を落とし、力なく俯いてしまった。

「殿下」

 そんな王子にクラヴィスさんは優しく声を掛ける。

「帰りましょう。それが彼女を守ることにもなります」

 王子は何も答えない。
 クラヴィスさんは続けてアルさんの方を見た。

「アルディートさん。先ほどのお話、引き受けてくださいますか?」
「え? あ~……」

 アルさんが困ったように唸る。

「いや、なんつーか、俺の意思はともかくアイツは絶対に断るよな」

 同意を求められ私は小さく頷く。

「はい、多分……」

 彼のすこぶる嫌そうな顔がありありと頭に浮かんだ。

「あ、でもカノンちゃんが頼めば聞いてくれっかな」
「そ、そんな、私が頼んだって」

 ――また余計なことに首を突っ込みやがって!

 そう怒鳴られるに決まっている。
 例え行き先は同じでも、彼にとって呪いを解くこと以外、全て「余計なこと」なのだと思うから。

 しかしそこで思い出す。

「あ! でもラグ、あの時王子に言われた呪いのことすごく気にしてて、もしかしたらそれを教えるって言えば――」

 ひょっとしたら、引き受けてくれるかもしれない……!

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