拝啓ヒトラーさん



6歳の頃の私は、前川家と学校が世界の全てで、そこから弾かれてしまったら世界が終わる気がしていた。
「海外の学校へ行かせるべきか」という前川夫婦の会話も、捨てられてしまうように感じていた。
18になった今でもその感覚は残っている。

例えば、私の付き添いで病院に前川「夫婦」で来ることとか。
例えば、私の学芸会に前川「夫婦と弟」が観に来ることとか。

家族みんなで私を応援してくれる姿を見るたびに私は思うのだ。
やっぱり私は里子なのだな、と。

おそらく、私が大学受験をするとしたら。
きっと合格発表のときには前川家「総出」で見にくるのだろう。
そうして合格を喜んでくれるはずだ。

愛されているのは分かる。
大切にされているのも分かる。
ただ、本当の家族とは違う温度なのだろうなとは常に思っている。
気安かったり、素っ気なかったり、めんどくさがったり。
そういう、本当の家族にあるであろう汚い部分が、私はずっと欲しかったのだ。



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