月夜に笑った悪魔
「もうやめて……!!それ以上は死んじゃうから……っ!!」
今出せる精一杯の声。
私の声が彼に届くか不安だったが、暁は……ピタリと手をとめて私に目を向けてくれた。
目が合えば、なぜか動けなくなる。
……感じたのは、恐怖。
血だらけの暁を見て、怖いと思ってしまった。
まだ数日だけど、暁と一緒に過ごしてそれなりに彼のことは知ったと思っていた。
優しいところも、温かさも知った。
でも、暁もまた……別人に見えてしまった。
彼の頭からぽたっと垂れる赤い血。
おでこ、左目をつぅっと伝って垂れていく。
そこは……スマホが直撃したところ。
容赦なく投げて直撃したから、ケガしたんだ。
「あ、えと、ごめ──」
声を出したあと。
また、この場を眩しく照らす明るいライト。
バイクのエンジン音がこの場に響いた。
ここにとまったのは、2台のバイク。