トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜
"家族ていいな"
自分の家と異なる風景を見たとき、はじめて思えた。
私も……早く結婚したい
新しい家族を作りたい
あんな風に楽しくご飯食べたら
普通の白いご飯だって
きっと美味しいんだろうな
いや、今日の私は、変だ。
熱でもあるのだろうか……
16歳の私は結婚願望ってものが芽生えはじめていた。
そして当たり前ながら
あぁ……
流奈は雄也くんとお腹の子と家族になるんだと、改めてこの現実を噛み締めた。
"お腹の子を必ず幸せにする"
16歳の流奈が決心した日に
送ってくれたあのメールは私の宝になった。
私は帰り道、電車から見える真っ暗な空を見つめながら願っていた
必ずと決意した流奈自身がどうか幸せになりますように……と。
そして、人の幸せを願うくらい私はまともな人間になれたんだと、そんな自分の心情が嬉しくもなった。
トンネルに入ったとき窓ガラスに映った私の顔は
マスカラがたっぷり塗られ
キラキラしたアイシャドウ
そして強くキリッと跳ね上げたアイラインの目元とは裏腹に
流奈の顔を思い出しながら口元はにっこりと優しく微笑んでいた。
そして、そんな自分もいいなと素直に思ったんだ。