トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜
Chapter2
天邪鬼
誰にも言わなければあの出来事は全て悪夢だったと片付けられる。
口にしなければ、きっと全てが夢だったのだと、私はそう長い夢から覚めているのだから……。
いつか、そうしている間に記憶から消えるはず。
私は自分のベッドの上で目をつぶり、何度も呪文のように唱え、陽平と今日、肌を触れ合って、キスを交わしたことだけを思い出そうとする。
必死に……何度も。
「やめてーーーーっ!!!」
その瞬間ベッドから飛び起きて座ると頭を抱えた。
私の鼓動がもの凄い速さで動き出す。
陽平といた時とはまた違う、とてつもない速さで、酷く。
次第に呼吸が荒くなってきて、それを落ち着かせるために天を仰いだ。
それなのに、私の脳内は陽平がどんどん消されていく。
「いや……いやーっ!!」
昔、厳重に鍵をかけたはずの記憶
決して蘇ってはいけなかったのに記憶……
私がずっと誰にも言わず秘密にしてきた事
今まで閉じ込めてきた記憶
私の心が殺された日----。