トルコキキョウ 〜奈月と流奈を繋ぐ花〜
気付いたら3時間目の終わりのチャイムが鳴っていた。
そんなに私は読書に没頭していたのか、なんて思いながら手にしていた本にしおりを挟み机の上にそっと置いた。
「今日はここまで……」
そう数学の授業の終わりを先生が知らせようとした時
ガラーーーッ!!!
勢いよく開かれた教室の後ろのドア。
一斉にその方向へと向けられた視線……。
「あっ……」
思わず出てしまった声に木本が反応してこっちを向いた。
一斉に視線を浴びた当の本人は呑気に大あくびをしながら、自分の席にカバンを置くと、上履きをカツカツ鳴らしながら、私の方へと向かい歩いてきた。
「橋本っ!!!いいから一度座れ!!」
先生が大きな声でそう怒鳴ると「うるっさ……」と、小さい声で呟き私の目の前へと立った。
「おはよう!」
「ぁあ……おはよう」
私の口から思わず出た挨拶の言葉。
なんとも言えない視線が集中する中で、なんとも言えない、ぎこちない空気感。
何か話さないといけないような緊張感
隣の席の木本は静かにその様子を見守っていた。