哀夢(19~20歳編)
初めての出産
 長女を産んだときは、たいへんだった。

 破水して、病院に行くと陣痛があり、わたしはお気に入りのぬいぐるみを離さなかった。遠くで、看護師さんの声が聞こえた。 

 長女の首にへその緒が巻き付いているので、できるだけ普通分娩でいくが、もしもの時は、帝王切開に切り替える。みたいな内容だったと思う。

(痛すぎてよく覚えてない……。)

 痛くて痛くて、旦那さんの手を握っていた。すると、
「10時になったら、オレ仕事いかなき…。」
と、旦那さんが言う。

「………うん。」
 涙でボロボロの顔で頷く。


 21:22、お腹から、内臓が飛び出したような感覚とともに、痛みから解放された。

 旦那さんは赤ちゃんを抱かせてもらう。わたしは、裂けた部分の処置を受け、やっと赤ちゃんとご対面‼
 
 かわいい!………より先に、
(小さな手、細い指…壊れそう。)
と思い、抱っこしてきた旦那さんに聞く。

「触ってもいいんよね?」

旦那さんは笑いながら、
「オレ達の赤ちゃんやろ?」
と言ったので、壊れないように、そっと手を触る。

 握り返して来る小さな手。 
(かわいい!)
 その時初めて思った。お義母さんと弟たちが入ってきて、次々と抱いていく。

 旦那さんは、
「じゃあ、オレ仕事行くね。また明日。」
と、行ってしまう。

 看護師さんが、
「おっぱいあげてみようか。」
と言った。

「…はい。」
とは言ったものの………。

(出て行けよ‼)

 なぜか、義母と、義弟は出て行かない。
 わたしは、3人に見られながら乳を出し、初乳を飲ませようとする。
……が、うまく行かない。

 2500g以下なら、保育器に行っていたはずの娘。ただ、50g超えていることや、わたしの精神状態を考慮して、母性がつきやすいように…と、出されていた娘は力が弱かった。

「まだ、吸う力が弱いからねー。」
という看護師さんに、
(その前にそこの3人出せよ!!!!!)
と思いながら、
「…はぁ…。」
と、曖昧な返事をする。

 わたしたちは、長女の出産を期に、彼の実家の隣に越した。

 しかし、この距離がアダとなる。ちよあの夜泣きが始まると、泣き出すとすぐにお義母さんが、飛んで来た。

「そうちゃん(3男)が、恵美(えみ)ちゃんの泣き声に敏感で、ちょっと泣いたら泣きよるちうるさいんよー。」

 嬉しそうにそう言うと、恵美を抱いて外をウロウロしだす。しばらくすると、恵美は寝てしまう。

 その繰り返しに嫌気が差して、旦那さんに言った。
「ちょっと、来すぎなんやけん…。こんな来られるとストレスなんやけん…。」

 旦那さんはお義母さんに言ってくれて、
頻度は減った。
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