哀夢(19~20歳編)
ウザい!
 恵美を産んで、退院して、3週間がたった頃、旦那さん方の親せきが、集まって、恵美を見たいと言ってきた。

 恵美を連れて行くと、みんなで恵美をたらい回しにすると、

「高木家の顔じゃないねぇ。」
「和(なごみ)さん、残念ねぇ。」

と、失礼なことを言いまくり、恵美が泣きだすと、

「愁さん、おっぱいじゃないの?」

…という。恵美は、出が悪いおっぱいを嫌っていたので、わたしは搾乳して、出なくなった1ヶ月後から、ミルクに切り替えて、精神科の薬を再開していた。

 わたしが旦那さんに、
「ミルク作って来て!」
とお願いして、哺乳瓶で飲ませていると、

「母乳じゃないのねぇ。かわいそう。」
「愁さん、母乳で育てないと元気に育たないわよ!」
「おっぱいから直接飲ましてごらん!」

 わたしはその雰囲気に耐えかねて、旦那さんにミルクと恵美を押し付けると、慌てて自分の家に戻る。

自分は間違ってない!
大丈夫…!大丈夫…!

自分に言い聞かせながら、布団を頭から被り、震えながら、あがる呼吸を整える。

過呼吸になりそうなときは、吐く方に意識を持っていく。決して吸いすぎてはいけない。

……ハッハッハッ………

 どのくらいたったのか…わたしは目を醒ました。旦那さんが、そばで心配そうに覗き込む。あのまま意識がとんでいたらしい。

旦那さんは、頭を撫でながら言う。
「ごめんな。きつかったやろ?」
「あたし、あの人たちムリ!」
わたしが食い気味に言うと、
「おばさん軍団はみんなあんな感じやけね……。あっっ!でも、出産祝いもらったよ!」

………開けてみてため息をつく。
「ねぇ、こんなフリフリの服着せたく無かったんやないん?」
……そこにはフリル系の姫系のお洋服がたくさん………。

 わたしも旦那さんも、活発な子になって欲しいと思っていたので、
「姫系の服は着せないで育てようね!」
と言っていたのに…。

 わたしは何もかも気に入らなくて、涙目でふて寝する。

 彼の親戚は好きになれなかった。唯一好きだったのは、始めに声をかけてくれた叔父さんだけだった。

 この人だけは、わたしに無理強いをしなかった。
「親戚の集まりも、来たいと思えば来ればいい。イヤイヤなら来なくていい。」
と言ってくれていた。

 いつか会いに行きたいと思っていたが、都合が合うより前に、ガンで亡くなってしまった。
< 6 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop