青の秘密を忘れない
第5章 想いはさらに強くなる
家に帰ると、まだ午前七時台だった。

玄関に積み重ねた段ボールの間をすり抜けて、リビングに入る。
まだ、夫は帰ってきていない。

まずお風呂に入って洗濯をして朝ごはんを食べて……。
やらなくてはいけないことを考えていたら、急に現実に戻ってきた気がした。

でも、と青井君にもらったネックレスに触れる。
これを含めた今が、現実なのだ。
そっとジュエリーボックスを開き、そこにネックレスをしまった。

朝ごはんを食べ、歯磨きをしている時に夫が帰ってきた。

「ただいま」

嬉しそうな夫の顔を見て、私の心が罪悪感で静かに重くなる。
夫は一瞬私に近付いてきたが、歯磨き中と見てそのままソファーに向かった。
おそらく歯磨きをしていなければ、ただいまのキスをしていただろう。

よかった。

今は夫とキスしたくなかった。
青井君の唇の感触を忘れていないうちは。
ずっと拒みたい気持ちもあったが、それは何か疑われる気がした。

「ゴールデンウィーク、友達と遊びに行ってもいい……?」

なるべく平静を装って、夫にそう問いかけた。

「いいよ、引っ越したらなかなか会えなくなるしね」

そう、夫は私を信用している。
私はそのことにさらに罪悪感を抱いた。
でも、同時に青井君に会えるかも知れないことに胸が弾んだ。

「ありがとう」

そう夫に笑いかけながら、私は青井君に会いたいと連絡するのだった。
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